原材料のパワー

 

大豆のお話


ヒトと同じように、

乳酸菌も発育のためにタンパク質が必要です。

大豆乳酸菌発酵液では、

乳酸菌用のタンパク源(窒素源)として、

大豆を用います。

 

日本人にとって大豆は、味噌や醤油の原料であり、

お豆腐や煮豆、きな粉や納豆の原料であり、

さらには節分の豆まきには欠かせない小道具でもあるなど、

本当に身近な食材です。 

日本における大豆の歴史は古く、

縄文時代の遺跡から大豆の痕跡が発掘された例もあります。

大豆の原産地は現在の中国北東部だと考えられていますので、

縄文時代には

既に大陸との何らかの交易があったのかも知れません。  

 

大豆が栽培食物として重要視されるようになったのは奈良時代からで、

肉食を厭う仏教の教えの影響があるようです。

大豆は良質の植物性タンパク質が豊富ですので、

仏教の教えにより肉食を控えてきた昔の日本人にとって

大豆は重要なタンパク源の一つでした。

 

大豆のユニークな点は、タンパク質や脂質のような主栄養素の他に、

微量ながら体の健康に重要な働きをする栄養素が含まれている点です。

その代表的なものがイソフラボンです。

 

長野県小川村の大豆畑
長野県小川村の大豆畑

最近はイソフラボンの機能性に関して

よく知られるようになりましたが、

一昔前までは大豆の「えぐみ」の原因物質として嫌がられ、

改良によってこれの含有量が少ない品種を作り出そうとする

動きがありました。

現在ではむしろ品種改良によって

イソフラボンが豊富な品種を作りだそうとする試みもあります。

 

大豆中のイソフラボンの量は品種の違い以上に

生育環境の違いに大きく左右され、

一般的に南の地域で作られる大豆よりも

北の地域で作られる大豆に多く含まれる傾向があります。

また、

大豆の実がまだ青い夏場後半から実が熟す秋にかけての

気温が急激に低下するような地域で育つ大豆に、

より多くのイソフラボンが含まれるといわれます。

 

大豆麹乳酸菌発酵液で用いられる大豆は、

北信州の小川村の山の畑で有機無農薬農法によって作られます。

ここは夏の終わりから急激に気温が低下する地域ですので、まさにイソフラボンの多い大豆を生産するのに最適な条件です。

 

喜源バイオジェニックス研究所では、8種類の大豆を集めてイソフラボン量を測定し、比較検討しました。

その結果、西山大豆のブランド名で小川村で生産されるナカセンナリという種類の大豆が、地元の気候にも適し、

かつイソフラボンの量も十分ある事が分かりました。

この実験結果に基づき、大豆麹乳酸菌発酵液には小川村の西山大豆を用いています。

 

イソフラボンが脚光を浴び始めた原因の一つとして、

日本食への世界的な関心の高まりがあります。

欧米人と比べて平均寿命が明らかに高い事に加え、

心筋梗塞などの血管病や、乳ガン、前立腺ガン、大腸ガン、

さらには骨粗鬆症などの罹患率が日本人は低い、

あるいは低かったわけですが、

その原因の一つとして和食に多く使われる大豆製品が注目され、

その中の成分の一つであるイソフラボンの働きに

注目が集まるようになりました。

 

イソフラボン分子の構造が

女性ホルモンのエストロゲンの構造に似ている事から、

これがエストロゲン受容体に結合する事によって

過剰なエストロゲンによる反応をブロックしたり、あるいは逆に、

更年期以降に女性ホルモンが減少する場合には

イソフラボンが受容体に結合する事による

穏やかな女性ホルモン様作用が期待され、その結果、

更年期特有の種々の症状を緩和する、というメカニズムが提唱されています。

 

イソフラボンには多くの種類があり、それぞれで効果に違いが見られます。

生の大豆で最も多く見られるタイプはダイジンやゲニスチンと呼ばれるイソフラボンの配糖体ですが、これらは味噌が熟成する途次において

ダイゼインやゲニステインと呼ばれる糖が外れたアグリコンタイプに変化します。

これらダイゼインやゲニステインは、ダイジンやゲニスチンに比べ、腸管からの吸収が良いと言われています。

また、ダイゼインは、ある種の腸内細菌の働きでイクオール(エコール、イコール)というタイプに変化しますが、

イクオールは他のタイプのイソフラボンに比べてエストロゲン様の働きが強くなると考えられています。

ところがイソフラボンをイクオールに転換する事のできる腸内細菌を持っている人と持っていない人がいるので、

同じ大豆を食べてもヒトによってイソフラボンの働きに差が生じる可能性が指摘されています。

8-ヒドロキシダイゼインの構造式
8-ヒドロキシダイゼインの構造式

 

大豆麹乳酸菌発酵液で用いる大豆は、

麹菌によって液体大豆麹に変えられます特許第4794486)。

液体大豆麹の作製中、麹菌の働きでイソフラボンは色々な化合物に変化します

このとき、抗酸化能が培養日数に伴って急激に上昇しますが、

その原因物質もまたイソフラボンである事が分かって来ました。

しかもそのイソフラボンは生の大豆や豆乳には含まれておらず、また、味噌や醤油などにも

あまり見出されないタイプのイソフラボンの 8-ヒドロキシダイゼイン(8-hydroxydaidzein

である事が最近になって証明されました。

 

 

つまり、大豆麹乳酸菌発酵液は、

他の大豆関連製品にはあまり検出されない強力な抗酸化作用を有するイソフラボンを含んでいる食品なのです。

現在、喜源バイオジェニックス研究所では、このイソフラボン化合物を精力的に研究中です。

大豆に関する参考文献

  • 豆食品 渡辺篤二共著 1971 光琳
  • 大豆蛋白質 森田雄平 2000 光琳
  • 大豆タンパク質の加工特性と生理機能 日本栄養食糧学会 1999 けんぱく社
  • ダイズのヘルシーテクノロジー 河村幸雄編 1998 光琳 
  • 大豆イソフラボン 家森幸雄編 2001 幸書房
  • ダイズの健康宣言 大久保一良監修 2000 日本食品出版
  • 豆の事典-その加工と利用 渡辺篤二監修 2000 幸書房

黒糖のお話


ヒトと同じく乳酸菌も、生育や代謝時に糖分を必要とします。

大豆麹乳酸菌発酵液では、糖源として黒糖を用います。

大豆麹乳酸菌発酵液で用いる黒糖は、鹿児島の奄美大島や種子島、あるいは沖縄で、

有機無農薬~減農薬農法で作られたものを使用します。

  

乳酸菌の名前の由来である「乳酸」ですが、

これは乳酸菌が培地中の糖を代謝して生育に必要なエネルギーを作り出す際に生じる副産物です。

糖はエネルギー源として以外にも、

乳酸菌の菌体を構成する様々な構造物の成分や、体の外に分泌する粘液物質(菌体外多糖)の成分とります。 

大豆麹乳酸菌発酵液では、

培地中の糖分として黒糖を用います。

黒糖は、精製された一般的な白い砂糖と比べて

ミネラルやビタミンなどの成分が圧倒的に多いため、

これらの微量元素の宝庫として、

ヒトのみならず乳酸菌の発育にも

大変効果的な食材です。 

 

黒糖というと、

一般的には精製していない褐色の砂糖全てを

指して呼ばれる事も多いのですが、

厳密には、サトウキビの絞り汁に石灰を加えてpHを中和した後、そのまま加熱濃縮して固化したものだけを指す言葉です。

 

固化した純粋な黒糖を粉末状にするのは物性上困難ですので、殆どの黒糖はブロック状で売られています。

スーパーの棚などには粉末状の黒糖様の商品も並んでいますが、

これらの多くは使いやすくするためにサトウキビの絞り汁に色々なものを混ぜて粉末加工した商品で、厳密には黒糖と呼ぶ事はできません。

 

黒糖の栄養素としては、糖分の他に、その豊富なミネラル分が注目されます。

中でもカルシウムとカリウムが高濃度に含まれているのが特徴的です。

カルシウムは骨の主成分であると同時に筋肉や神経細胞の機能を維持するのに

欠かせない成分であり、その重要性に関してはここに述べるまでもありません。

カリウムは野菜などに多く含まれる成分で、ナトリウムと比較的類似した元素です。

そのため、カリウムは体の中でナトリウムと拮抗して働く性質があり、

過剰なナトリウムを腎臓で尿中に排出する際には無くてはならない成分です。

つまり、カリウムが少ないとナトリウムが上手く排出されない事を意味します。

ナトリウムはヒトが生命を維持するうえで無くてはならない成分ですが、

これの過剰摂取は高血圧や胃ガンの原因の一つになると考えられています。  

 

和食は、欧米の食物と比べて栄養学的にもバランスがとれ、見た目も美しく、

日本人の長寿の秘密の一つとして近年非常に人気が高くなり、

平成25年には世界文化遺産にも登録された事は皆様もよくご存じの事だと思います。

しかしながら、和食の唯一の欠点として、食塩の使用量が高い事が指摘されます。

日本の長寿県である長野も、昔は食塩の過剰摂取が問題となっていました。

これが医師や保健師さんによる指導によって大きく改善され、現在の長寿県になりました。

この例を見ても、特に日本人は食塩を控え、カリウムを多く含む野菜などをより積極的に摂取する事が求められます。

  

 

大豆麹乳酸菌発酵液は、カリウムが豊富な大豆や黒糖を原料に用いる一方、ナトリウムの含有量が非常に少ないため、

塩分を控えている方には特に強くお勧めできる製品です成分表

黒糖に関する参考文献

  • (独)農畜産業振興機構ホームページ http://sugar.alic.go.jp/tisiki/tisiki/tisiki0712a.htm
  • 沖縄県黒砂糖協同組合ホームページ http://www.okinawa-kurozatou.or.jp/
  • ウイキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/黒砂糖
  • 五訂日本食品成分表 2001 医歯薬出版(株)
  • ハーパー生化学 1988 丸善
  • ヴォート生化学 1996 東京化学同仁
  • 図解生理学 1981 医学書院
  • 真島生理学 1986 文光堂
  • 食と健康-Ⅰ 日本栄養・食糧学会 1996 学会出版センター

米糠のお話


大豆麹乳酸菌発酵液は、

乳酸菌発育のためのビタミン源として米糠エキスを用います。

 

江戸や明治の頃のお話ですが、

精製した白米ばかりたくさん食べていた江戸や東京の人達の間で

「江戸わずらい」という病が流行りました。今でいう脚気です。

その特徴は各種の神経障害で、

特に足に伝わる末梢神経に変性が生じ、その結果、

歩行が困難となります。

酷くなると心臓や脳の神経にまで障害が及びますので、

最悪の場合は死に至る事もあります。

白米をたくさん食べると同時に

豚肉などの副食物の摂取が少なかった時代には

大変多い病気でした。

江戸時代以前に白米を日常的に食べる事ができた人々は

一部の人だけでしたので、

脚気にかかるヒトもお公家さんなどに限られていました。

その後、江戸も元禄期になりますと、政治の中心である江戸では庶民も白米を食べるようになり、

さらに江戸末期には、寿司や天麩羅、ウナギなど、現代までも受け継がれる江戸由来の食文化が花開きました。

その結果、白米文化が江戸の庶民の間に益々広がると同時に、脚気患者も増える事となってしまいました。

 

地方においては江戸とは異なり、麦や粟や稗の混ぜ飯、あるいは玄米や半突き米などを主体とした食事が長らく続きました。

現代と違って「エンジン」や「モーター」などの動力機械が無く、せいぜい牛馬の力を利用していた時代ですので、

農作業や漁業など、力仕事の多くは人力に頼っておりました。

昔は副食類が少なかったので、エネルギーの源である主食の米飯を大食らいしなくてはなりません。

農村漁村地域ではそう頻繁に白米飯を食べる事もできませんので、

玄米と雑穀を主体とした「一升飯」を食べて仕事に精を出さなくてはなりません。

この場合は確かに脚気を患う事は無かったでしょうが、胃腸への負担は大変なものであったように思われます。

大飯を食べるためにも、また高度の肉体労働を維持するためにも、種類の少ない副食類は塩分の高いものが中心であったと考えられますので、

昔の日本の農村漁村には、胃病、高血圧、脳卒中が大変多かったと思われます。 

 

その後、明治以降も過剰な白米食が脚気の原因である事はなかなか分からず、

日清戦争では多くの兵士の間に脚気による損傷を出す事となりました。

このとき従軍医であった森倫太郎(森鴎外)は両者の因果関係を否定し、糧食としての白米に固執した結果、

日露戦争でさらに多くの脚気患者を出してしまった事は有名な話です。 

 

精米過程において捨てられてきた米糠の中に

脚気に対して特効薬的に効く物質が存在する事を

世界で最初に報告したのが鈴木梅太郎博士で、明治43年の事です。

これはその後に「ビタミン」として知られるようになった一連の物質の発見の先駆けであり、

ビタミンB1(チアミン)として単離~精製されるようになりました。

 

一方で、その後もなかなか日本人の食生活は改善されず、

脚気は結核と並ぶ国民病であり続けました。

これが殆ど撲滅されるようになったのは、

戦後も昭和30年代になって、食生活に欧米の影響が浸透するようになってからの事です

 

お米は稲の種(たね)です。

我々が食べる部分は

多くがデンプン質で構成されますが、

これは米粒が発芽し、

成長するための

エネルギーの貯蔵庫です。

 

米糠は米粒の胚芽の部分を

集めたもので、

発芽に必要な様々な栄養素が

濃縮されて存在します。

一般的に知られているのは

上述したビタミンB群ですが、

その他にも

カリウムやマグネシウムなどの

ミネラル類が豊富です。 

 

 

 

米糠の中のあまり知られていない成分の一つに、IP6(イノシトール6リン酸)があります。

IP6 は別名フィチン酸とも呼ばれ、金属元素に対するキレート作用が強い物質です。

キレート作用とは金属元素を挟み込んで働きを抑える作用の事ですが、

米糠中のフィチン酸はその強いキレート作用で食物中の過剰な鉄イオンなどを押さえこみ、

その結果、

活性酸素の発生を抑えて発ガン抑制効果を発揮する

との報告もあります。

米糠に関する参考文献

  • みそ文化誌 2001 全国味噌工業共同組合連合会 
  • 天然抗ガン物質IP6の驚異 アブラカラム・シャムスディン 2000 講談社
  • Sakamoto K, et al. Growth inhibition and differentiation of HT-29 cells in vitro by inositol hexaphosphate(phytic acid). Carcinogenesis. 1993 14:1815-1819
  • ウイキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/チアミン
  • ウイキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/フィチン酸
  • 五訂日本食品成分表 2001 医歯薬出版(株)